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Beauty Source キレイの魔法

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恋愛セミナー58【総角】

第四十七帖  <総角-3 あげまき> あらすじ

八月二十六日は日取りがよいと、薫はまず自分が先に宇治に出発し、匂宮が後から馬でやってくるよう手ばずを整えました。
中の姫も大姫も薫の訪れに複雑な思いです。
「夜になったら中の姫のもとに案内を。」と弁の君に頼む薫。
中の姫に心を移してくれたことを喜び、錠をおろした襖ごしに薫と話をする大姫。
薫は襖のすき間から出ていた衣をとらえ、大姫を抱き寄せるのでした。

夜になって、匂宮は薫に教えられた部屋の前にやってきます。
弁の君の案内で、首尾よく中の姫の寝室に入っていく匂宮。
事情を聞き驚愕する大姫をなだめながら、匂宮がなかなか出てこないのをねたましく思う薫。
女房たちは事の成り行きがつかめないまま、薫に任せたのだからと納得しようとしています。

夜が明けないうちに帰った二人を見送り、姫達は呆然としています。
後朝の歌はすぐに届けられ、匂宮は満足している様子。
「私の思いをよくあることだと思われているのですか。露深い道の笹原をかき分けてやって来たというのに。」
物慣れた恋文に匂宮の浮気ぶりを案じて、大姫は中の姫に返事を書かせます。

次の日は誘っても薫は行こうとしないので、匂宮は一人で宇治へ向かいました。
思いがけないことといっても、匂宮をぞんざいに扱うことはできないので精一杯迎える準備をする大姫。
遠い道のりを京から通ってきた匂宮を見て喜ばしく思うのも、昨日とはうって変わった気持ちの変化です。

中の姫は何もする気が起らず、化粧や着付けも大姫が行いました。
先が不安で、涙にくれる中の姫。
そんなことは考えもせず、昨日よりさらに美しくしとやかになった中の姫を愛おしく思う匂宮。
将来を何度も誓う匂宮の言葉を、まだ受け入れる気持ちにはなれない中の姫なのでした。

「結婚して三日目は三日夜の餅(みかよのもち 結婚をした夫婦が一緒に食べる餅。)を。」という女房の声に、戸惑う大姫。
初めてのことなので、わからないままに作らせていると、薫が三日夜の祝いに必要なものを取り揃えて届けました。
「全てを許しあったわけではありませんが、私達の仲は何もないとは言えませんね。」と薫。
「隔てのない心は通いあっていますが、全てを許し合うなんてとんでもないことですわ。」と大姫は返します。

その夜、明石の中宮は浮気沙汰の絶えない匂宮を呼びだし、しばらく宮廷から出ないようにと伝えます。
誠意ある態度を示すために、三日目の今夜、どうしても宇治に行きたい匂宮。
「お咎めは私が受けましょう。」事情を察して、匂宮を宮廷から抜け出させる薫。
時間ばかりが過ぎて待ち焦がれていた大姫は、入念に薫き染めた香気を漂わせながらやってきた匂宮の訪れを有り難く思います。
中の姫も匂宮の真剣な思いを感じ、少しずつ打ち解け始めました。
女房達は素晴らしい縁組を喜び、大姫がいまだに薫に心を開いていないのを陰でののしるのでした。

恋愛セミナー58

1 薫と大姫     強行手段で
2 匂宮と中の姫  あっさりと

中の姫を代わりにしようとする大姫に、薫が打った手。
なんのてらいもなく、あっさりと中の姫と関係を持ってしまう匂宮と、今だに先へ進めない薫。
寝室に入り、顔を見てしまったら、それだけで結婚を意味する当時、薫の行動の方が変わっているのです。
何度も抱き寄せ、夜を過ごしつつ一線を越えられない薫は自分の「愚かしさ」を自嘲しています。
聖から俗へ、なかなか意識が転換してゆかないようですね。

結婚が正式なものと世間に認められるためには、三日間連続して通われなくてはなりません。
姫達の反応も、一日目は呆然と、二日目はおずおずと、三日目は和やかになってゆく。
大姫が親がわりになって、中の姫の世話をし、匂宮の訪れを心待ちにする様子、
まるで自分が夫を迎えたかのようですね。

親がいなくてうまくできない部分は薫がフォロー。
常日頃、子どもっぽい母・女三宮を支えている薫は、細かいところまで行き届いています。
本当は、人の世話をしている場合ではない薫なのですけれど。
姫達にとっては、予期せぬ匂宮の出現ではありましたが、まずは結婚の形をきちんととって船出できたといえます。

さて、ちらっと出てきた明石の中宮。
あの明石の君の娘であり、帝の妃にして匂宮の母。
とにかく今、一番力を持っている女性が、一番に可愛がっているのが第三皇子である匂宮。
できれば、身分高い申し分のない女性と身を固めて欲しいと願っている母は、
息子が宇治に通い始めたことはちゃんとお見通しで、わざと三日目の夜を阻止しようとしたに違いありません。

これは匂宮にとっても、乗り越えるべき壁。
浮気な匂宮が、真剣に女性に対するには、相手の美しさやたしなみはもとより、「恋路をはばむ障害」が必要。
祖父である源氏が、困難であればあるほど恋に熱心になったように、
匂宮を本気にさせるには、宇治への道のりと、周囲の横やりが不可欠とも言えるのです。

案外、変わり者の薫が、匂宮を試そうとして宇治の情報を明石の中宮の耳に入れたのかもしれませんね。


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